はじめに
複数の配信プラットフォームで字幕の見た目を最適化する作業は、一見すると細かな調整に見えますが、視聴者の集中度や動画への没入感に大きく影響します。DaVinci Resolveを使う編集者の多くは、フォントや色、配置などの見た目調整に意識を向けがちですが、実はそれ以上に重要なのが 行分割(セグメンテーション) の設定です。プラットフォームごとに最適な「1行あたりの文字数」が大きく異なるため、対応を怠ると読みづらい雑然とした字幕になってしまいます。
この記事では、各プラットフォームに適した文字数の目安(TikTokは10〜20文字、Instagram Reelsは20〜30文字、YouTubeは35〜42文字、シネマサイズでは50〜60文字)を紹介し、それを踏まえて字幕を構成する方法を解説します。また、Resolveでの面倒な再編集を避けるための上流工程ワークフローを手順で示し、複数プラットフォーム向けに作業時間を大幅に短縮する方法もお見せします。
さらに、SkyScribe のようなツールを使って、面倒な動画ダウンロードや手作業での整形を省き、正確なタイムスタンプと行分割を備えた字幕ファイルを作る方法についても紹介します。
なぜ「1行あたりの文字数」が重要なのか
この設定は、字幕の 読みやすさ と 表示のテンポ に直結します。スマートフォンのような小さな縦画面では行を短くすることで目の負担が減り、左右への視線移動も最小限に抑えられます。一方、横長の大型スクリーンでは行を少し長くし、行替わりの頻度を減らすことで映像とのバランスを保ちます。
プラットフォーム別目安
- TikTok:10〜20文字/縦動画、表示領域が狭い仕様に合わせる
- Instagram Reels:20〜30文字/オーバーレイとのバランス重視
- YouTube:35〜42文字/横長動画と中型画面に最適化
- シネマサイズ映像:50〜60文字/映画的フォーマット向け
これらの数値は単なる見た目調整ではなく、視覚認知の研究にも基づいています。字幕をスムーズに理解するには、1単語あたり平均0.3〜0.5秒の余裕が必要です。そのため 1秒あたりの文字数(CPS) もCPLと同じくらい重要です。たとえ行の文字数が適正でも、時間に対して文字が詰まりすぎると理解度は低下します。
DaVinci Resolveで直面する問題
Resolve Studioの「Create Subtitles from Audio」は高速ではありますが、プラットフォーム別CPLを意識した分割はしてくれません。行をInspectorパネルで調整したり、クリップ上で長さを変えたりする作業は、複数バージョンを作る場合に何倍にも増えてしまいます。
無料版ユーザーの場合は、自動生成機能が使えないため、キャプションエディタで最初から手打ち入力する必要があります。そのため行分けや再配置も全てResolve内で完結させる必要があり、作業負荷が高くなります。
根本的な問題は、字幕の分割作業が編集工程の後半で発生している点です。Resolve内で行分けを修正するたびに、同じ作業を繰り返すことになり、時間を大きく浪費しています。
上流で行う「事前分割」ワークフロー
ステップ1:正確な書き起こしを上流で作成
Resolve内から始めるのではなく、まず タイムスタンプと話者情報 を含む整った書き起こし原稿を用意します。SkyScribe のように動画リンクを直接入力する方式なら、ファイルをダウンロードせずにプラットフォーム規約に準拠してテキストデータを取得可能です。
この時点で句読点や話者の切り替えまで整ったテキストが手に入るため、SRTやVTTへの変換もスムーズ。Resolveに持ち込む段階で、すでに字幕として機能する形になっています。
ステップ2:CPLに沿った再分割を適用
書き起こしが完成したら、各配信先に合わせて行分割ルールを適用します。例えばTikTokが主力であれば、1行15文字前後で自動分割するよう設定します。こうすることで、読みやすい改行を保った字幕を事前に用意できます。
Resolve内で手動分割を行うと、1分の映像でも数十回クリックが必要になりますが、自動再分割 のような一括処理なら、全体を数秒で配置換えできます。複数プラットフォーム用に作る場合、その差は大きな時間短縮になります。
ステップ3:SRTまたはVTT形式で書き出し、Resolveにインポート
DaVinci Resolveは外部字幕ファイルの直接インポートに対応しています(チュートリアルはこちら)。最適化したSRT/VTTをタイムラインにドラッグすれば、即座に字幕トラックが作成されます。上流で行った分割が反映されるため、CPLやCPSの調整もそのままです。
ここからResolve内では、フォントや配置、背景などの見た目調整に専念できます。文字構成の再編集は不要です。
ステップ4:プラットフォームごとのスタイル確認
正しい分割でも、見え方はプラットフォームによって変わります。Resolveの表示プリセット機能で各端末の見え方をシミュレーションし、再生時に自然に感じられるか確認します。この段階で調整するのはあくまで見た目のみです。
時間短縮の効果
例えば3分間の早口対話動画の場合:
- Resolve内で手動分割:プラットフォームごとに約20〜30分
- 上流で事前分割:全て合わせても約5分
TikTok・Instagram・YouTube用を毎週作る場合、年間50時間以上 の節約になり、その時間を制作や宣伝に充てられます。
さらに SkyScribeのクリーンアップ機能 を使えば、不要な言葉や誤った句読点の修正、タイムスタンプの統一も可能。読みやすく、すぐ公開できる字幕を一括で用意できます。
追加のベストプラクティス
CPLだけでなくCPSも管理する
モバイル向けの速い会話は1秒あたり15文字以下、中速は20文字以下、プレゼンのようなゆっくりでは25文字程度までが目安です。速い場合は2行表示や短縮表現で対応すると、読みやすさを維持できます。
話者識別を保つ
複数人の会話では、話者ラベル付きの書き起こしを上流で準備すると混乱がありません。Resolveは話者を自動判別しないため、ラベル付きSRTをインポートすると手間が省けます。
翻訳は早い段階で
多言語配信を予定している場合、翻訳は上流で行い、元のタイムスタンプと分割ルールを維持します。これにより各言語でも読みやすさが保たれます。
まとめ
「1行あたりの文字数」は単なる見た目ではなく、視聴者の理解や集中度を左右する設計要素です。書き起こしをきれいに準備し、CPL目標に沿って再分割し、それをResolveに直接インポートすることで、後半作業の繰り返しをなくせます。
無料版ユーザーもStudioユーザーも、この上流工程を取り入れればプラットフォーム対応済みの字幕を効率よく作成できます。CPLを意識して管理することで、見た目も読みやすさも向上し、TikTok・Instagram・YouTube・映画サイズ映像のいずれでもエンゲージメントを高められます。
FAQ
1. Resolveで自動生成後にCPLを調整するだけではだめ? 可能ですが効率が悪く、ResolveではまとめてCPL調整する機能がありません。上流で分割しておけば、その作業が不要になります。
2. Resolveへの字幕インポートはどの形式が最適? SRTとVTTがおすすめです。タイムスタンプと分割情報を保持でき、事前最適化した字幕に向いています。
3. CPSの計測方法は? 字幕ブロックの文字数を表示時間(秒)で割ります。書き起こし時にCPS表示機能があるツールを使えば自動計算されます。
4. CPLは翻訳精度に影響する? はい。CPLを考慮せず翻訳すると、行分けが不自然になり意味が途切れる場合があります。最初からCPL最適化された原稿を翻訳すると読みやすさが保たれます。
5. 無料版Resolveユーザーは事前分割の恩恵が大きい? その通りです。無料版では自動生成機能がないため、外部書き起こしが必須です。事前分割しておけば、インポート後の編集作業をほぼ省けます。
